深い絶望の中で・・『ヒミズ』

イミさんのブログで知った『ヒミズ』を観ました。

( 参考 「園子温監督の映画『ヒミズ』の悲劇性」 )

 

まず感じたのは、
「我々のおかれている状況って、ここまで絶望的なのか」
っていう感慨というか、え?そうなん?っていうか・・・。

 

住田くんという少年と茶沢さんという少女の話。
二人とも中学生。
二人とも両親がひどい。育児放棄。虐待。

 

住田は父をとうとう殺す。
茶沢はそんな住田に自首して罪をつぐなうことを勧める。
住田は自殺も考えたが、自首することにする。
簡単に言えば、こんなあらすじです。

 

絶望が深い。
二人の家庭状況はほんとに絶望的状況。
その二人の個人的な絶望感が今の日本の状況を象徴しているように
感じます。
ところどころに挿入された東日本大震災直後の映像がそれを感じさ
せます。

 

住田は父を殺した後、悪い人間を殺すことで自分の命を社会のため
に役立てようと、悪い人間を求めて毎日街をさまよいます。

 

住田はどんな人間を殺そうとしたか。
理由もなく他人に刃物を向ける人間を殺そうとした。
でも、そいつは世の中に絶望した人間だった。
また、ある殺人者は、住田を「心の友」と言った。

 

帰ってきた住田に茶沢は自首を勧めます。
「自首して、罪をつぐなって、自由になって、やりたいことをやろう」
「出所したら、結婚しよう。子どもをつくって、普通の暮らしをしよう」

 

僕は、その場面で、住田はもはや、「普通」とはかけ離れたところに
きてしまっていることを感じました。
もう「普通」には戻れない。
そのことがあらためて確認されるような、そんな茶沢の言葉のように
感じました。

 

翌朝、ピストルの音が響きます。
茶沢はその音で目が覚めます。
住田は自殺した! そう思った茶沢は川に向かって泣きます。

 

でも、住田は川から現れます。
川の土手を走り始めます。
茶沢も走ります。
「住田! 頑張れ!」
二人は土手を走ります。
「たった一つの花よ。夢を持て。」
中学校の先生の言った空虚な言葉を、茶沢は住田に向かって
叫びます。
住田も叫びます。「すみだぁ-! がんばれー!」
大震災直後の映像が画面に映し出されます。
そして、エンドロール。

 

希望なんて、ない。
だけど、絶望のなかであきらめるわけにはいかない。

 

それが、「たった一つの花」という言葉や、
「夢をもて」などの 陳腐な言葉にこめられているように感じました。

 

ていうか、そういう陳腐な言葉しかない。
でも、あきらめるわけにはいかない。
というか、生きていくしかない。
そういうことじゃないんかなあ。

 

感動のあまり、2回観てしまった。
2回目は特に「絶望の深さ」を全体から感じました。

 

余談1
でも、茶沢という少女はすごいな。
というか、あり得ないぐらい強い。

 

余談2
少年を演じた俳優は、インタビューでこう言っています。
「ウソは演じてませんので」
映画というのはウソなんですけれどという断りを入れてですが。
すごく納得しました。